著者は古色蒼然とした科学者から取材などをリジェクトされた経験があると言うから、本書に現れる科学者のように、おそらくはすんなり時間を割いてくれるのは、いわば新世代の捌けた科学者であると言う注釈は必要だろう。
 ビジネスマンにこそ読んで欲しいと言う本書は、きちんとした科学ライターがビジネス書の手法を使って文系の人にもわかるように書かれた、第一線を切り開いた科学者の総論である。登場する科学者も、世間受けしそうな凡才・無学でも近寄りがたい奇才・鬼才でもなく、とんでもない逆境を乗り越えた如何にも的なサクセスストーリーもない。きちんとした能力を持つか獲得して、きちんと行動し、きちんと成果を出すと言う話は、仮に成功者であるからといってもあまりに平素な、或いはひがみの対象物に見えるかもしれない。個人的には科学的記載にまったく物足りないのだが、いかにも的なにおいのしない話に非常は、文体からして小気味よく痛快に読めてしまう。
 こういう話がスッキリ出来る科学者、スッキリ書けるきちんとした著者というのは世間的にもっと評価されていいと思うのだが・・・世知辛いねぇ、世間は。

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