水問題関係はある程度読んできたが、あっさりと社会経済面からのありようを切った本としては、なかなか好感が持てた。が、意地悪く言うと水を石油に替えても構造的に成り立ちそうな話の仕上がりになっているのは事実。
 日本の水ビジネスのありようが、技術ではなくひも付き商売の仕方によって律せられている歯痒い状況は良くわかった。が、より狡猾な企業的発想ならキーテクを持つことによって水メジャーを制御できる存在になることだろう。物事を概観するのはいいが、もう一歩高所から論じてみてはどうか、という点が気になった。
 そしてもうひとつ、著者は社会経済には詳しいがもう少し科学技術系に知識を入れてはどうか。アルミではなくポリシリカ鉄をリン吸着剤に使うのは、リンが植物(作物)にとって利用できる形態にあるためである・・・というのは無理としても、水質汚染・汚濁の引き起こす問題への切込みがあまりに浅い。

 私の参画しているリン資源リサイクル推進協議会は、本書の最後で述べられているチーム水・日本とも団体間の付き合いがあるようだ。利用と汚染と資源管理は私の研究の範疇と近しいので、妙に親近感が沸いた。どう寄与できるかは、まだ未知数。情報収集のはずが、どうやら情報提供からはじめる必要があるみたい。

コメント

yasai
2009年12月1日19:34

ありがとうございます。貴兄の指摘は一々正しいと思います。60歳になると本を読む速度と能力が衰えますので、助かります

淵瀬春秋
2009年12月2日13:30

Yasaiさん、コメントありがとうございます。
 商社はモノを作らずビジネスモデルを作るといいますが、水ビジネスはかなり堅固で永続的かつ汎用的なモデルである必要があります。はたして政府の口利きなしで切り込んでいける商社マン・商社を手玉に取る商社が存在できるかが日本の将来のカギになるのでしょうね。

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