安全は科学的事実、安心は心理的要素、だから、私は世間で安全安心と一括りにすることには凄く抵抗がある。本の要旨的には、安全を確保しつつ、その真摯な姿勢と説明を適時適切にアピールして確固とした信頼を確立することが安心に繋がるんだよ、ということになるのだと思う。そういったことが非常にシステマチックに、行動科学的かつ心理学的要素も加えて(こちらの研究はあまり進んでいないので)解説していることに非常に好感がもてた。
 リスク管理者、説明者としての責任を全うし、信頼を勝ち得るという本の趣旨を体現しているのもいい。

 ところで、研究者をしていると、世間とのズレというものが少なからず生じてくる。前読んだ「地球の目線」は芸術家の書いた本で、彼らも世間とはズレているが、彼らには美術館、画商、販売店という世間とのI/Fが確固として確立している。そういうI/Fのシステムを研究者は持っていないことが、脆弱な科学技術基盤を作り上げているんじゃないかと私は思う。研究者は現場に出るべき、というのはある面で正しい。だが、ある面で膨大な情報の石から玉を集めて知らしめる仲介者、というのも必要ではないだろうか。そのシステムが充実して役割を果たしているのは、「科学技術未来館」くらいしかないと思う。

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