南米の文明をトウモロコシではなくジャガイモが作り上げたのではないか、と言う仮説や、世界での広がり方、日本での受け止められ方、そして国際ジャガイモセンターをはじめとするジャガイモ栽培の将来など、中々読み応えがあった。
 高地の気候を考えれば、ジャガイモが文明を作ったとしても農業気象的&作物学的におかしくはなく、まったく腑に落ちるのだけど、どういうものかな。食に対するこだわりや発想をもっと柔軟にした方がいいと思う。

 イギリスでもアイルランドでも、ジャガイモにはずいぶんとお世話になった。重さの割りに低カロリーなのは、今となっては返って美点なんじゃないかな・・・私を含め、油の味を覚えるってのは怖いもんだ。

 日本の(独)国際農林水産業研究センターでアフガン戦争の後の復旧策として農業支援に関して現地調査結果の報告会があったけど、気候土壌資源的にはサツマイモも行けるのだけど、味覚的にはジャガイモがいいのだそうだ。ジャガイモを使ったパン(と言うかクレープ状のもの)や餅、でんぷん活用など、付随して広めるべきは色々あるだろう。

 本書で残念なのは、日本でジャガイモの育苗育種を手がける部門(北海道農業研究センター等)が登場しないことだ。日本における普及の歴史、国際的な広がりを論じるなら、落としてはいけない点だと思うのだけど。

 麦と米の世界から離れてみることを考えると、結構広がるものもある、そういう面でお勧めの一冊でした。

コメント

どん太
どん太
2008年8月10日17:24

こんな本があるんですね。
私大学時代のゼミがメソアメリカ文明でした。
ちょいと地域はずれますね。でも面白そうです。

淵瀬春秋
淵瀬春秋
2008年8月10日21:11

出版当時から農業関係者として興味はあったのですが、敢えて手にしませんでした。農業関係の研究者として日本の記述が不十分なのは減点ですが、文化人類学的な地道な野外調査の成果など、中々良く出ていて面白かったです。
 農業試験場は年に一回は一般公開をしているので、そういうときにでも色々な人に来て欲しいと思います。山本紀夫氏もその一人です。

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