ISBN:4948754226 単行本 福岡 克也 ワールドウォッチジャパン 2005/04 ¥2,625

 読んだのはいまさらだが・・・まあ、最悪のシナリオと最悪シーンを書き込んでいるという感じはぬぐえない。世界はもうちょっと上手く成り立ってしまうもの、社会経済であって科学じゃないね、というのは地球白書時代からの感想だけど、じゃあ切って捨てられるかというとそうでもないというのも事実。
 場面を強調するための引用例がジャーナリスティックだが、現状の俯瞰に関してはまあ納得が行くレビューがなされているし、都市化は非農地化を促進するという現象学・考現学的部分は食と人口のせめぎあいを良く表現している。
 しかし、将来どうしたら良いか、ということに関してはまったく考えが甘いというか考えなしといっていい。緩和策のオプションを書くことにもうちょっとページを割くべきだろう。そうでなくても書かれていることに的外れな部分、現状では過去のものとなった部分、議論の一面のみを記載している感が否めない。
 食糧危機に面して、飼料用穀類の課税を上げる、というオプションは畜産抑制による穀類の食用市場への移流を促し、栄養学的にも肥満を減らすなどの効能を発揮する(笑)というのは、うなずける。しかし、現状では穀類はだぶついており価格は下落しているからバイオ燃料なんていいだしている。この本ではバイオ燃料はいいような書き方をしているが、穀類を使うことは炭水化物のアルコールへの変換効率は高いが炭水化物生産効率は低い。
 作物残渣を飼料にすることで畜産物を提供することは短期的には需要を満たせるかもしれない。しかし土壌炭素・窒素のストックを減らし中長期的には作物生産性を低下させるだろう。ただし、日本では食品のロス(供給祖食料から純食料の時点で10-15%)を飼料にまわすことは、メリットである。おいしい肉のために美食の限りを尽くす牛豚鶏に食べさせるのに難があるだけで。

 まあ、色々だが、「もったいない」をわかる人なら読んで損は無いだろう。

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