平均値の論点と棄却域の論点
2007年11月5日 お仕事 コメント (2) 朝のBBCで日本の報道、勿論政治ではなく、地震報道の話で気象庁が登場した。「予測ではありません」と言う話で緊急時の報道体制についてで、20人の技術者(研究者ではない!)がモニターに向かって観測網を通じた予報業務に携わっていると言う。話は変わって9.11、ヒースロー空港は乗り換え時ですらセキュリティチェックを受ける(シャルルドゴールでは受けていなかったが・・・)くらい神経質なのだが、仮にハイジャック機が出た場合についてで、「撃墜は出来るか」に対して「政治等の理由で難しい」と言う回答。慎重な議論で、何処かの国程ファストではない。
日本人のカドミウム暴露量に関しては、「新田論文」と呼ばれる厚労省の報告書が基礎になっている。それに対し推定の問題点を浅見輝夫博士は土壌肥料学雑誌で痛烈な批判を行っている。
詳しくは、新田論文原文
http://www.fsc.go.jp/senmon/osen/o-dai2/osen2-siryou2.pdf
浅見輝男(2005)日本土壌肥料学雑誌76(3) 357-367
を参照されたい。
新田論文の疑問点は子細に検討しなくてもあらが見えてくるのだが、「95%の人はPTWIを超える事はなく、問題はない」としている点に対し、浅見博士は「暫定耐容週間摂取量(PTWI)を超える摂取をする事になる人の中で、腎機能障害等になる人が出た場合に国は救済策を取るのか」と論じている。
農水省のコンテンツ
http://www.maff.go.jp/cd/html/A11.htm
は浅見論文の最頻値を取ったものだが、最頻値の事であって、自分の事ではない、という点に注意。
食品安全委員会によるトランス脂肪酸摂取量は幅を持たせて表示しているが、この上限と下限はどう決めたか。どんな方法かまで調べていないので論じられないが、確実に最大値最小値ではないだろう。摂取カロリーの1%を超える人は確実に居ると反証的には即答できる。公衆衛生的にはそこが問題となるが、対してどう政策は動くべきか。
各国の対応を紹介するのは省いて、その裏側を考えてみたい。
厳しい規制をひくのは乳製品保護&輸出に対するアドバンテージ保全&植物油由来の固形油の排除による酪農業の保全、と言う事が考えられる。
それほど厳しく出来ない理由には、水素添加による固形油生産・トランス脂肪酸生成からそれを低くするシステムへの移行に社会経済的問題がある場合、食用油(動物性にせよ食油物性にせよ)を輸入に頼るしかない場合などが考えられる。
国内の社会経済事情と国民の健康保全は色々な要素を加味して政策が出来る。後で薬害エイズ/肝炎問題のように後ろ指を指されないよう行動するか、またはそれを付随的損害として計上した上で行動するか、それも政策である。
日本は玄米中のカドミウム濃度を0.4ppm以下とするよう申し入れ、CODEXの当初の規制である0.2ppmを変更させた。適用すると約5%の水田が規制に引っかかることになるからだ。公衆衛生的に浅見論文は正しく、規制は厳しくした方が良い事になるが、政策をどう捉えるかは個人の判断基準による。
カドミウムの分析は簡単かつ高精度に可能で、私でも0.1ppb単位の測定が出来、食品中のカドミウム濃度を極微量まで分析する事はそれほど難しくない。新田論文自体その元データまで遡れたので使いたかったのだが、食品のカドミウム濃度の分布(ポワソン分布)こそあれ、その分布の代表値(平均、最頻値、中央値等)は記載がなく、私のような第三者が関われる状況ではなかった。私はカドミウム問題で論文(査読あり)を単発で書いているが、最大の問題は、農地でのカドミウムの収支を算定できなかった事であると思っている(それでも価値があると言うのが査読者と編集委員の意見だったが)。何故と言う事はない、私の論文はアイテムを変えながら、「収支=投入ー持ち出し」という事を延々して来たからで、個人の哲学の問題である。
日本人のカドミウム暴露量に関しては、「新田論文」と呼ばれる厚労省の報告書が基礎になっている。それに対し推定の問題点を浅見輝夫博士は土壌肥料学雑誌で痛烈な批判を行っている。
詳しくは、新田論文原文
http://www.fsc.go.jp/senmon/osen/o-dai2/osen2-siryou2.pdf
浅見輝男(2005)日本土壌肥料学雑誌76(3) 357-367
を参照されたい。
新田論文の疑問点は子細に検討しなくてもあらが見えてくるのだが、「95%の人はPTWIを超える事はなく、問題はない」としている点に対し、浅見博士は「暫定耐容週間摂取量(PTWI)を超える摂取をする事になる人の中で、腎機能障害等になる人が出た場合に国は救済策を取るのか」と論じている。
農水省のコンテンツ
http://www.maff.go.jp/cd/html/A11.htm
は浅見論文の最頻値を取ったものだが、最頻値の事であって、自分の事ではない、という点に注意。
食品安全委員会によるトランス脂肪酸摂取量は幅を持たせて表示しているが、この上限と下限はどう決めたか。どんな方法かまで調べていないので論じられないが、確実に最大値最小値ではないだろう。摂取カロリーの1%を超える人は確実に居ると反証的には即答できる。公衆衛生的にはそこが問題となるが、対してどう政策は動くべきか。
各国の対応を紹介するのは省いて、その裏側を考えてみたい。
厳しい規制をひくのは乳製品保護&輸出に対するアドバンテージ保全&植物油由来の固形油の排除による酪農業の保全、と言う事が考えられる。
それほど厳しく出来ない理由には、水素添加による固形油生産・トランス脂肪酸生成からそれを低くするシステムへの移行に社会経済的問題がある場合、食用油(動物性にせよ食油物性にせよ)を輸入に頼るしかない場合などが考えられる。
国内の社会経済事情と国民の健康保全は色々な要素を加味して政策が出来る。後で薬害エイズ/肝炎問題のように後ろ指を指されないよう行動するか、またはそれを付随的損害として計上した上で行動するか、それも政策である。
日本は玄米中のカドミウム濃度を0.4ppm以下とするよう申し入れ、CODEXの当初の規制である0.2ppmを変更させた。適用すると約5%の水田が規制に引っかかることになるからだ。公衆衛生的に浅見論文は正しく、規制は厳しくした方が良い事になるが、政策をどう捉えるかは個人の判断基準による。
カドミウムの分析は簡単かつ高精度に可能で、私でも0.1ppb単位の測定が出来、食品中のカドミウム濃度を極微量まで分析する事はそれほど難しくない。新田論文自体その元データまで遡れたので使いたかったのだが、食品のカドミウム濃度の分布(ポワソン分布)こそあれ、その分布の代表値(平均、最頻値、中央値等)は記載がなく、私のような第三者が関われる状況ではなかった。私はカドミウム問題で論文(査読あり)を単発で書いているが、最大の問題は、農地でのカドミウムの収支を算定できなかった事であると思っている(それでも価値があると言うのが査読者と編集委員の意見だったが)。何故と言う事はない、私の論文はアイテムを変えながら、「収支=投入ー持ち出し」という事を延々して来たからで、個人の哲学の問題である。
コメント
興味深い話ですね・・カドミウムのリンク先のPDFも少し読んでみました。自分の領域では、環境因子の暴露は血中の指標との相関を見て定量の妥当性をサポートするのですが、それができると良いですね。トランス脂肪酸について、自分は最大値最小値って試料中のものから得られたそのものと判断していました。トンラス脂肪酸関係の社会経済的問題・・興味ありますが、畑違いな感じがしてしまいますね・・・偏らぬよう、気をつけませんと。。
私の研究の主題はあくまで人間社会と環境の関わりを農業面から評価する事であって、農業と人間社会(食、衛生、栄養、文化)の関わりではないです。が、いつかはここに切り込んで、人-食環境-社会環境-自然環境と言うものをフラットに表現する必要があると考え、少し手を出して見ている状況です。
業績を重ねてPh.Dを取る、と言う事と、テニュアで業績を重ねることには何かしら違いはあると思いますが・・・
先ずは、PhDに向かって頑張って下さい。