ISBN:4535048223 単行本 林 俊郎 日本評論社 2003/01 ¥1,680

 政治と社会って恐いなぁ、と言うのと、科学者としてはピアレビューの重要性を感じた一冊。
 結論から書いておくと、ダイオキシンに言われているような害、急性毒性、慢性毒性、催奇形性、環境ホルモン性(これ自体実はフェイクだが後ほど)、は認められない。それっぽいデータは統計的に意味がないかぶれの範囲、または作為によるもの

 まあ、私もヴェトナム戦争を間接的に知っている分、非科学的な情報をすりこまれたまま(流石に理科と算数は好きでも小学校低学年)、ダイオキシン問題に接したとき、半分の科学的な疑問と半分の感覚的な脅威を感じていたのは事実。土壌のダイオキシン汚染が出たとき、じゃあヴェトナムと比較すれば全てが氷解するはず、と言うのにそのような報告書は全く出なかったのには相応の疑問を感じだ(就職後の話だから)。
 ちなみにダイオキシンの害に関しては80年代序盤には「意味ないよ」と言うのが国際的には明らかになっていた。が、そのような「安全性」は全く一般に知らされないままだった。そのあたりの資料も本書でレビューされている。
 それでもなお電光石火でダイオキシン法が出来てしまったのは、ヴェトナム戦争の嘘に嘘を重ねて封じ込める社会政治と巨大焼却炉ビジネスネットワークがドライビングフォースとなっているのは透いて見える。
 これに果たす報道の果たす悪い役割は極めて大きい。マスコミに出る学者は嘘1/3ノリ1/3センセーショナリズム1/3と見られても悪くはないと思えてくる。
 科学者ならピアレビュー・クリティカルレビューのある論文が一般書に優先する。格のある論文は英文だし、一部英文書もそのような経路をとる(奇しくも「教科書」のレビューを頼まれたことがある)。その時点で(私も)一段ステップが高くなるが、そういうものを十分にレビューすることなく、一般受けする話だけで済まそうというのは、さらにマスコミをアウトプットとするのは売名行為以外に考えられなくなる。その学者が十分に学術的な研究をしているのかを評価しているマスコミは、残念だが存在しない。せいぜい一般書を紹介する程度だ。

 ピアレビューは慎重に行おうと思う。書くときも、出来るだけ情報を集めよう。隠棲する事は望まれていないが、私の行政への接し方も(日本農業保護のためがあるとはいえ)少し考えた方がいいかもしれない。

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