じゃらんで見付けた栃木県霧降高原のホテル(と言っても10室)壱番館へ行く。高速道路は空いていて、ホテルまでは昼に出て昼食休憩込で4時間と楽勝の範囲。周りは売れ残り更地と住宅、別荘、ペンションがぽつぽつ建だけで何があるというわけでもない。
 建物はアメリカンハウス、ということで、内装も独特の派手さは有るし、客室のテレビも申し訳のような16インチで冷蔵庫もない。が、クイーンサイズのベッドは広々で寝心地は良いく、700mちょいの標高でも涼しさを感じられるし、広葉樹の緑も濃く、静かで気兼ね無く使える部屋が一室与えられるとしたら、灯りの具合も悪くないし、気分を変える、簡易別荘のミニ書斎としては全く贅沢な空間である。主はそれほど接客になれていない感じでちょっと頼りないが、カントリー調のエントランスの雰囲気は良い。
 風呂は循環・人工温泉となると、こういう宿の売りは何といっても食事、と言うことになるのだろうが、その面で妥協も非の打ち所はまったくなく、食事を主目的にして決して裏切られることはない、所だった。
 ハウスワインはやや辛口の白・ミディアム〜ライトボディ。前菜は一皿に5つの料理が載って、一つ一つの仕事が非常に良く、それぞれに狙った味が出ている。イタリアでさんざん苦しめられ、日本ではともすると「これとバジルがあれば万全」というまるで「Tri Xを4号で焼く」世界とは一線を画してオリーブオイルの嫌味を上手く処理している。次はパンとスープ。提携パン屋から届けられるバケットの塩味がちょうど良いのを脇役に、ブイヨンと野菜の旨味の見事なハーモニーによる滋味に満ちた味わいのスープは、溜息が出る仕上り。メインはミディアム・ウエルダンのフィレステーキと平凡のようで塩加減の良さと肉の旨味をさらに引き立てる付け合せのインゲン等の野菜とシンプルなパエリア風の炊き込みごはんには、それほど肉に執着しない私達に驚くような喜びが加える。最後のドリップコーヒーにデザート5品(果物2、ケーキ2、シャーベットとクリームソース)は贅沢を締めくくるに相応しいだけの質。ケーキは甘さを控えてチーズの香りをわざと強くしたり、カカオバターの苦みを生かしているのがあまりに憎い。謎のシャーベットはなんと完熟したパイナップルだった。これにはドルチェに舌の肥えた妻でも虚を突かれた。
 これだけの質と量が黙っていても供されるなら、それ以上を望むの意味は無いだろう。

 ただ、惜しかったのは客の質。隣の恋人同士と見られる二人づれは酒ばかりで料理を賞味せず、行儀も悪い。出来合いの調理品になれてるんじゃないかという餓鬼や後ろの子供には勿体ない。
 客を選べないのは辛いことだね。

 妻とは海外旅行での食事の話をしたが、これほどまでに日本人にマッチした洋食が供されるということには感嘆以外のものは無かった。

 部屋に帰り、ごろごろ。
 適当にのんびりして、夜が更けて、ビールをやって眠りに落ちる。
 明日の事はあまり考えていない。

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