プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステリー
2005年11月28日 読書
ISBN:4062575043 単行本 福岡 伸一 講談社 2005/11 ¥945
ブルーバックスは最新の科学をわかりやすく啓蒙することを目的とした新書である(まあ科学的でないのもあるけど)。著者も冒頭に記しているが、本書はプリオン説、即ち異常プリオンたん白に寄って狂牛病、vCJD、CJDが発生する、に関して、これまでに行われた研究の結果を、時にはプルシナー自身が科学論文に吐露した消しようのない矛盾点等を取り上げながら批判的に捉えた事が一点、もう一つはC型肝炎がヴァイラスを範にとって異常プリオンたん白の集積は結果であって原因ではないかとする説を紹介する。では原因は、というと、リンパ系や免疫系に最初に異常プリオンたん白の集積が起きることから、こちら関係の免疫系B細胞などが絡むのではないかとする仮説を立てる。後半は想像の域を出ない(これはプリオン説にも共通する部分がある)ことから、教養的ではないだろう。が、仮にプリオン説を信じるにしろ、これだけ詳細にわかりやすくプリオン説の広く信じられることとなった基礎を紹介した本は、2001年の「なぜ牛は狂ったか」以降、私の行った本屋で見たことはない。その面で先ず絶対的お薦め。
これが特定危険部位を除けば安全とする論を否定する根拠であり、発症した家畜の廃棄を勧告するWHOの論である。既存のアレルゲンタンパクを含まなければGM作物も安全とする国の言い分の馬鹿げた部分のようにも感じる。私が感じていた異常プリオンたん白に対するたん白研究者の対応の謎(2次構造の違いがこれほどまでに安定性を高めるということに科学・工学的に対応する研究者がいないのはなぜか)、言われてみれば変なこと(外的な体温以外エネルギー無しに2次構造が変化する)、言われてみてぎょっとしたこと(異常型プリオンたん白を純粋に単離し、これでプリオン病を発症させた研究例は存在しないしプルシナーも失敗している)など、結構勉強になった。
本年科学系読み物で最も面白かった本かもしれない。兎も角お薦め。
ブルーバックスは最新の科学をわかりやすく啓蒙することを目的とした新書である(まあ科学的でないのもあるけど)。著者も冒頭に記しているが、本書はプリオン説、即ち異常プリオンたん白に寄って狂牛病、vCJD、CJDが発生する、に関して、これまでに行われた研究の結果を、時にはプルシナー自身が科学論文に吐露した消しようのない矛盾点等を取り上げながら批判的に捉えた事が一点、もう一つはC型肝炎がヴァイラスを範にとって異常プリオンたん白の集積は結果であって原因ではないかとする説を紹介する。では原因は、というと、リンパ系や免疫系に最初に異常プリオンたん白の集積が起きることから、こちら関係の免疫系B細胞などが絡むのではないかとする仮説を立てる。後半は想像の域を出ない(これはプリオン説にも共通する部分がある)ことから、教養的ではないだろう。が、仮にプリオン説を信じるにしろ、これだけ詳細にわかりやすくプリオン説の広く信じられることとなった基礎を紹介した本は、2001年の「なぜ牛は狂ったか」以降、私の行った本屋で見たことはない。その面で先ず絶対的お薦め。
異常型プリオンタンパク質量は、ここでみたように感染性(感染力)と必ずしも対応関係にない(p132)
これが特定危険部位を除けば安全とする論を否定する根拠であり、発症した家畜の廃棄を勧告するWHOの論である。既存のアレルゲンタンパクを含まなければGM作物も安全とする国の言い分の馬鹿げた部分のようにも感じる。私が感じていた異常プリオンたん白に対するたん白研究者の対応の謎(2次構造の違いがこれほどまでに安定性を高めるということに科学・工学的に対応する研究者がいないのはなぜか)、言われてみれば変なこと(外的な体温以外エネルギー無しに2次構造が変化する)、言われてみてぎょっとしたこと(異常型プリオンたん白を純粋に単離し、これでプリオン病を発症させた研究例は存在しないしプルシナーも失敗している)など、結構勉強になった。
本年科学系読み物で最も面白かった本かもしれない。兎も角お薦め。
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