ISBN:400430928X 新書 本橋 哲也 岩波書店 2005/01 ¥777

 植民・被植民の陥るありようとそれを打破する一時的な展開という単純な図式ではなく、今もなお残る植民・被植民の有り様を常に打破し続ける哲学をわかりやすく論じた本。
 その中で「知識人とは何か」に関しても深く言及するが、これは私が日本生態学会に参加し、そこで感じる心地よい居心地の悪さそのものをとてもよく説明されている感じがして大いに興奮した。
 そして日本の戦後と戦後50年たってから起こったポストコロニアルな展開の洞察も興味深い。特需の中にあるかぎり、日本はまだ戦後ではないのだ。
 ちょっと残念だったのは、個と社会が十二分にシームレスに連続するものとして確実に記載されているかというと、どうも哲学に傾倒する傾向があり、そこから社会へという図式で逆が充分に記載されていないのではないかと思われたことである。

 岩波は私には固い本が多くて、何度も読み直しつつ読んでも充分に理解出来ているとはいえないが、読み直しが苦痛にならないで逆に興味が深くなってゆく感じがした。早くも今年のNo.1書籍が出た感じがする。

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