5月11日の日記

2004年5月11日 バトン
 五月晴れの下、午前中は田植えで汗を流す。10平米の枠圃場の上に板を渡し、その上から植えるので田に入ることはない。でないと田面が荒れて収量調査にならないから。
 終わって木陰でお茶。おいしい。
 暫く使っていなかった圃場で大豆と麦を鶏糞と豚ぷんを使った手抜き栽培をしたい、と圃場管理をする業務科の人に話したら結構好感触。これ、別に有機栽培をしたいわけではない。飼料作物の生産をしたいのである。日本において飼料生産とは即ち牛(特に乳牛)の粗飼料(牧草の類い。飼料用トウモロコシは栄養価は比較的高いが濃厚飼料ほど重宝されないようだから学術的な分類では入らないが粗飼料の仲間に入れていいかもしれない)の生産のことであり、研究も実際の畜産の現場でも牛の餌しか研究していない。しかし現実には牛は結構な量の麦・大豆・グレインソルガムなどから出来る濃厚飼料を食べている。豚、ニワトリは濃厚飼料しか食べていない。濃厚飼料の材料は100%輸入である(骨肉粉も濃厚飼料の原料で,これを食べさせれば多少自給できるのだけど)。何故輸入かといえば、当然安いからで、これは粗飼料も同じ。国産粗飼料は輸入の5倍する。濃厚飼料の原料なら10倍をはるかに越える。だから粗飼料に限らず家畜の飼料を国内で生産するなど全くの無駄、経営経済的に絶対成り立たないからこんな研究はナンセンスだ、粗飼料を作っているだけでも大したもんだ、なんてのが畜産の世界の定石である。
 しかし環境面からは違う。家畜ふん尿の処理適正化、つまりは堆肥化して農業生産に使うか高度浄化処理(下水処理)してきれいにして環境に出すかすることが法で決められている。どちらもコストがかかるが堆肥化して農業利用する方が、まだ低コストである。問題は誰がどこで何に使うかである。食料生産にまわせればいいがそれだけでは余りがでる。ならば飼料を作れば循環利用になるから理にかなっているといえるのじゃないか。少しでも低コストと考えるなら手抜きして栽培するに限る。
 業務課の人も、昔はし尿で食料を作っていたのだから別に悪くないと言う。なにより、あまり使われていない農地をちょっと面白いことに使おうということに同意してくれて作業も頼めるという。3年くらいしないと学会発表、うまくいっても業界紙に載るかどうかのネタだが、環境研究からの積極的なアプローチとしてチャレンジしてみたい。まっとうに作物生産をしたことはないけどうまくゆくかな。

 昨日の新聞で農水省のアンケートに「バイオマスを知っているか」という質問に、知っているという解答は25%くらいで、知っている人でも堆肥のことだと思っている人が多いというのがあった。バイオマスというのは生物(bio)量(mass)のことです。生態学的には東京都その近郊の人間のバイオマスは1100万人、という形で使えます。
 生態学用語だとニッチ(nich)というのもあるけれど、これは生態学的位置(例えば植物=一次生産者とか。本当はもっと細かい区分に使われる)の意味。経済や一般にはすき間と認識されるし辞書にもあるが、もともとは生態学用語であることも認識してほしい。

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